傷病手当金とは、健康保険の被保険者(会社員・公務員など)が病気やけがで働けなくなり、給与が支払われない場合に支給される給付金です。
自分では収入が得られない療養中の生活を経済的に支えるための制度で、給与の約2/3相当額が最長1年6ヶ月支給されます。健康保険組合または協会けんぽへの加入が前提です。
1. 支給額:直近12ヶ月の平均月給の約2/3
2. 支給期間:通算最大1年6ヶ月
3. 課税:所得税・住民税の課税対象外(非課税)
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
協会けんぽや健康保険組合に加入している会社員・公務員が対象です。国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、自営業者・フリーランスは原則対象外です(一部の国民健康保険組合を除く)。
業務上の病気・けがは労災保険の対象となるため、傷病手当金の対象外です。私生活上の病気・けが(風邪・うつ病・骨折など)が対象となります。
仕事を休み始めた日から起算して、連続する3日間(待機期間)を経過した後、4日目以降の休業から支給されます。待機期間は有給休暇・公休・土日でもカウントされます。
傷病手当金の支給対象日に、会社から給与が支払われている場合は支給されません。ただし、給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。
待機期間(連続3日)のカウントには有給取得日も含まれます。ただし有給休暇中は給与が支払われるため、有給休暇日は傷病手当金の支給対象外です。有給が終わって無給になった日から実際の支給が始まります。
1日あたりの支給額 = 300,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円/日
30日間の休業で受け取れる額(待機3日除く27日分)= 6,667円 × 27日 = 約180,000円
実際の月給を一定の等級に当てはめた金額です。社会保険料の計算にも使われます。交通費など含む月収から算定され、実際の月給と多少異なる場合があります。
支給開始日前12ヶ月に被保険者期間が満たない場合は、①支給開始日以前の被保険者期間の平均 ②標準報酬月額の全被保険者平均(30万円程度)のいずれか低い額を使用します。
標準報酬月額をもとにした1日あたりの支給額と、30日・90日・180日休業した場合の合計支給額の目安です。
| 年収(目安) | 標準報酬月額 | 1日の支給額 | 30日分 | 90日分 | 180日分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 年収300万円 | 25万円 | 約5,556円 | 約16.7万円 | 約50.0万円 | 約100.0万円 |
| 年収400万円 | 34万円 | 約7,556円 | 約22.7万円 | 約68.0万円 | 約136.0万円 |
| 年収500万円 | 41万円 | 約9,111円 | 約27.3万円 | 約82.0万円 | 約164.0万円 |
| 年収600万円 | 50万円 | 約11,111円 | 約33.3万円 | 約100.0万円 | 約200.0万円 |
※ 待機期間3日を除いた日数で計算。実際の支給額は標準報酬月額の等級・端数処理により異なります。
傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して最大1年6ヶ月(548日)です。2022年1月の改正により、途中で職場復帰して再び休業した場合でも、通算1年6ヶ月まで受給できるようになりました。
たとえば、休業6ヶ月 → 職場復帰2ヶ月 → 再休業の場合、残り1年(12ヶ月)分の傷病手当金を受け取れます。復帰して働いた期間はカウントされません。
支給期間が終了しても回復していない場合は、障害厚生年金・傷病手当の延長制度などへの移行を検討する必要があります。
勤務先の会社(総務・人事部門)を通じて、協会けんぽまたは加入している健康保険組合へ申請します。
「健康保険傷病手当金支給申請書」に以下の内容を記入します。
| 記入者 | 記入内容 |
|---|---|
| 被保険者本人 | 傷病名・療養期間・給与の有無など |
| 医師(担当医) | 療養が必要な状態である旨の意見欄 |
| 事業主(会社) | 休業・欠勤期間・給与支払い状況の証明 |
1ヶ月ごとにまとめて申請するのが一般的です。申請から支給まで約2週間〜1ヶ月程度かかります。申請期限は支給開始日から2年間(時効)のため、遡って請求することも可能です。
傷病手当金は所得税・住民税の課税対象外(非課税)です。確定申告の必要もありません。
在職中に傷病手当金を受け取っている場合、健康保険料・厚生年金保険料は引き続き徴収されます。傷病手当金から直接天引きされることはありませんが、別途支払いが必要です。育児休業中と異なり、休業中の社会保険料免除は適用されません。
退職後も引き続き傷病手当金を受け取るには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 資格喪失要件 | 退職日まで継続して1年以上の被保険者期間がある |
| 受給開始要件 | 退職日時点で既に傷病手当金を受給中、または受給できる状態にある |
| 労務不能要件 | 退職後も引き続き働けない状態が続いている |
有給消化中に退職する場合、退職日当日に出勤(または出勤扱い)していると、継続給付の条件を満たせなくなります。退職日も欠勤・休業として処理されるよう会社に確認しておきましょう。
有給休暇中は会社から給与が支払われるため、その期間は傷病手当金は支給されません。ただし待機期間(連続3日)のカウントには有給取得日も含まれます。有給休暇が終了し、無給の欠勤に移行した日から傷病手当金の支給対象になります。
はい、対象になります。うつ病・適応障害・パニック障害などの精神疾患も「業務外の傷病」として扱われ、傷病手当金の受給要件を満たせば支給されます。医師の診断書(意見書)が必要です。
国民健康保険には原則として傷病手当金の制度がないため、フリーランス・個人事業主は対象外です。ただし、一部の職業別国民健康保険組合(医師・建築士など)では独自に傷病手当金を設けているケースもあります。