みなし残業代(固定残業代)とは?違法なケース・超過分の請求方法【2026年版】

「月給に残業代込み」「固定残業代40時間分含む」——求人票や雇用契約でよく目にする表現ですが、 その仕組みや落とし穴を正しく理解している人は多くありません。 超過分の請求権、違法になるケース、自分の契約が適正かどうかの確認方法を解説します。

1. みなし残業代(固定残業代)とは?

みなし残業代(固定残業代)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を月給に組み込んでおく賃金制度です。 「月給30万円(固定残業代40時間分含む)」のような形で求人票や雇用契約書に記載されます。

制度の目的は給与計算の簡略化です。毎月の残業時間が変動しても、設定した時間内であれば追加計算不要で支払いが完了します。 労働基準法上は「定額残業代」とも呼ばれ、一定の要件を満たせば適法な制度です。

📌 「残業代込み」と「固定残業代」の違い

「残業代込み」という表現は曖昧で、何時間分がいくら含まれているか不明な場合は法律上無効になりえます。 適法な固定残業代には「〇時間分として△△円」という明示が必要です。

2. 有効とされる3つの条件

最高裁の判例(テックジャパン事件 2012年など)や厚生労働省の指針をもとに、固定残業代が有効とされるには以下の3条件が必要です。

条件具体的な要件
① 時間数の明示 何時間分の残業代として支払うか、契約書・就業規則・給与明細に明示されている
② 金額の明示 固定残業代として支払う金額が明確に分かる(月給全体と別に区別できる)
③ 超過分の支払い約束 設定時間を超えた残業分は別途計算して支払う旨が明示されている

3条件すべてを満たさない場合、固定残業代部分は「基本給の一部」とみなされ、改めて残業代を計算・支払う義務が生じることがあります。

3. 違法・無効になるケース

❌ 時間数・金額が明示されていない

「残業代込み」「諸手当含む」などの曖昧な表現だけで、何時間分がいくらかを示さない場合は無効です。 この場合、固定残業代として支払われてきた金額は基本給扱いとなり、改めて残業代を計算した差額を請求できる可能性があります。

❌ 超過分を「固定残業代の範囲内」として支払わない

「40時間分を超えても追加払いはしない」という運用は明確な労働基準法違反です(37条)。 固定残業代はあくまで「設定時間内の前払い」であり、超過分の支払い義務はなくなりません。

❌ 設定時間が著しく長い(過大なみなし残業)

80時間・100時間といった過大な固定残業時間の設定は、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)に違反する可能性があります。 また、実際に長時間労働が常態化している場合は過労死ラインとの関係でも問題になります。

❌ 最低賃金を下回る

固定残業代を除いた基本給部分が最低賃金を下回る場合は違法です。 東京都の最低賃金(2024年度:1,163円/時)を基準に確認が必要です。

⚠ 合法・違法の判断基準まとめ
  • 時間数・金額が書面で明示されている → 合法の可能性あり
  • 超過分を別途払うと明記されている → 合法の可能性あり
  • 固定残業時間が月45時間超 → 上限規制との整合性を要確認
  • 時間数・金額が不明 → 無効の可能性大
  • 超過分を払わない → 労基法37条違反

4. 超過分の計算方法と請求手順

超過分残業代の計算式

固定残業時間を超えた分の残業代は、通常の残業代計算と同じ方法で求めます。

時給 = 月給(固定残業代を除く基本給) ÷ 月の所定労働時間

超過残業代 = 時給 × 割増率 × 超過時間数

【計算例】月給30万円・固定残業40時間・実残業55時間の場合
  • 月給:30万円(うち固定残業代4万円・40時間分)
  • 基本給:26万円 / 月所定労働時間:160時間
  • 実際の残業:55時間(固定40時間超の15時間が未払い

時給 = 260,000 ÷ 160 = 1,625円
超過分(15時間) = 1,625 × 1.25 × 15 = 30,469円

※月45時間超の残業は割増率1.5倍(大企業は60時間超から適用)

超過分を請求する手順

  1. タイムカード・勤怠記録を取得する(証拠保全が最優先)
  2. 固定残業時間との差分を計算し、未払い額を算出する
  3. 会社の給与担当・人事部に書面で請求する
  4. 応じない場合は労働基準監督署に申告または労働審判・訴訟

未払い残業代の時効は3年(2020年4月以降発生分)。過去3年分を遡って請求できます。

5. 固定残業時間・年収別シミュレーション

月給に含まれる固定残業代の適正額の目安です。契約書の金額と照合してください。

月給(基本給) 時給換算
(÷160時間)
固定20時間分
(×1.25)
固定40時間分
(×1.25)
固定60時間分
(×1.25)
20万円1,250円31,250円62,500円93,750円
25万円1,563円39,063円78,125円117,188円
30万円1,875円46,875円93,750円140,625円
35万円2,188円54,688円109,375円164,063円
40万円2,500円62,500円125,000円187,500円
50万円3,125円78,125円156,250円234,375円

※所定労働時間160時間・割増率1.25倍(法定時間外)で計算。深夜・休日割増は含みません。

残業代が増えると手取りはどう変わる?

残業代が増えると社会保険料や所得税も変わります。給与手取り計算ツールでシミュレーションできます。

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6. 自分の固定残業代は適正か?チェックリスト

以下の項目をすべて確認しましょう。ひとつでも「×」があれば要注意です。

7. よくある質問(FAQ)

「基本給+諸手当」と書いてあるだけで時間数が不明です
固定残業代として有効とは認められない可能性が高いです。「諸手当」の内訳・時間数・金額を会社に書面で確認しましょう。明示がなければ、給与全額を基に残業代を計算した差額を請求できる場合があります。
固定残業代40時間分なのに毎月60〜70時間残業しています
超過した20〜30時間分は別途支払い義務があります。タイムカードや勤怠記録を保存し、差額を計算した上で会社に請求してください。応じない場合は労働基準監督署への申告が有効です。60時間超の残業が恒常化している場合は上限規制との関係も問題になります。
固定残業代40時間分・5万円と書いてあるが計算が合わない気がします
基本給25万円・所定160時間なら40時間分の適正額は約7.8万円です(25万÷160×1.25×40時間)。5万円では不足している可能性があります。差額分は未払い残業代として請求できる場合があります。
転職先の求人に「月給30万円(固定残業代含む)」とあります。確認すべきですか?
必ず確認すべきです。何時間分がいくら含まれているかで実質的な基本給が大きく変わります。内定前・内定後のいずれの段階でも、書面での確認を求めることは適切な行動です。
管理職でもみなし残業の仕組みは適用されますか?
労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合は時間外割増賃金の規定が適用外のため、固定残業代の概念そのものが当てはまりません。ただし「管理職」という肩書きだけでは管理監督者に当たらないケースが多く、実態(経営参画・労働時間の裁量・高い待遇)で判断されます。